ネットスーパーは近年、コロナ禍の影響もある中、多くの小売企業が参入し、生活者にとって浸透しつつあるサービスとなっています。
このようにネットスーパーは進出する企業がある一方で、黒字化が難しい事業とも言われます。
では、ネットスーパー事業に取り組む企業が増えているのはなぜでしょうか?
スーパー利用者の囲い込み
地方では人口減少に伴い、市場は縮小均衡に向かっています。従来の販促施策だけではシェア拡大が難しい中、ネットスーパーは新たな「オンラインの接点」として機能し、生活者のウォレットシェアを他社から獲得する手段となります。
既存店舗との併用によるLTV向上(*1)
ネットスーパーの中でも、実店舗から配送する「店舗型配送」モデル(*2)では、商圏内の生活者を効率的にターゲットできます。ネットスーパーと店舗を併用する利用者は、店舗のみ利用者と比べて月間購入金額が4.2倍高いというデータもあります。
既存の商圏資産を最大限活かしながら、LTVを引き上げることが可能です。
*1 :LTV(ライフタイムバリュー)= 顧客が自社との取引を通じて生涯にわたってもたらす利益の総額を示す指標。単発の売上だけでなく、継続的な利用や購入を含めた「長期的な収益性」を示す。
*2:主要なネットスーパーの配送方法は下記2種類。
店舗型配送
実店舗から商品を集荷して配送する方式。
既存店舗を活用できるため初期投資が少なく、早期立ち上げに適している。
センター型(倉庫型)
配送物流センターから利用者へ直接配送する方式。
店舗の営業状況に左右されず、安定した在庫管理や広域配送が可能。
拡大を続ける食品EC市場
経済産業省の「電子商取引実態調査」によると、2024年の食品・飲料・酒類におけるBtoC-EC販売額は3兆1,163億円(前年比6.4%増)に達し、市場は拡大を続けています。生活者のニーズも増えている中で、競合に遅れを取らないよう大小さまざまな企業がネットスーパー事業に参入し、競争が激化しています。
では、ネットスーパー事業を黒字化するためにはどれくらいの水準を目指す必要があるのでしょうか。ここでは、黒字化水準の収支モデルと、達成するうえで直面しやすい課題を取り上げます。
ネットスーパー事業は、実店舗事業とは異なり、購入商品のピッキング、パッキング、配送等の作業を小売側で担うことになります。
■運営作業一例(注文から商品の受け渡しまでの流れ)
そのため、ネットスーパー事業では需要(売上拡大)と供給(コスト最適化)の両方に取り組む必要があります。まずはPLを分解して収支構造を可視化し、黒字化に向けた課題を認識することが必要です。
◼️黒字化収支モデル例
※弊社が支援した複数企業のデータをもとにバスケット(1注文)単位に落とし込んだもの
retail HUBで、黒字化達成を伴走してきた企業では、以下のような課題が多く挙がります。
✔各数値指標の評価
✔開業店舗の選定・拡大戦略
✔集客(ユーザー獲得)
✔ピッキング・パッキング作業効率化
✔配送の効率化
私たちは全国14社以上のパートナー企業様に対し、システム(ウェブサイトやアプリ、管理画面など)の提供にとどまらず、それぞれの状況に合わせた最適な伴走支援を行ってきました。その過程で、ネットスーパー事業における数多くの課題解決ノウハウを蓄積しています。
本連載では、そうした知見をもとに、ネットスーパー事業の成功に欠かせないポイントや最新トピックスを整理し、皆さまにお届けしていきます。
次回は、retail HUBが支援している限界利益の黒字化を達成した企業様の事例をご紹介します。黒字化に至るまでのステップや、直面した課題に対して私たちがどのように支援したのかを具体的に解説します。
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