
第1回、第2回の記事で解説したように、ネットスーパー事業の最大の課題は、「いかに費用が発生するポイントを抑えて黒字化を達成するか」です。費用の中でも、「ピッキング」と「パッキング」は、収益性を大きく左右する重要な要素になります。

以前ご紹介したバスケット収支モデルケース(*1)では、1件あたりのピッキング・パッキング費用を300円に抑えることが、黒字化の一つの目安となっていました。しかし、この数値を達成することは多くの企業にとって容易ではありません。
(*1)黒字化達成水準を弊社が支援した複数企業のデータをもとにバスケット(1注文)単位に落とし込んだもの。

今回から3回にわたり、この「ピッキング・パッキング」の基本的な方法と効率的に運用するために必要なポイントを事例を交えて解説していきます。
ネットスーパー事業の収益性を大きく左右するのは、「ピッキング」と「パッキング」の作業時間と適切な人員配置です。
ユーザーの注文から商品の受け渡しまでの作業フローを見ると、この2つの作業が占める時間が大部分を占めることがわかります 。ピッキングは約30〜70分、パッキングは約20〜40分と、これら2つの作業が店舗における作業時間の5〜6割にも及びます 。そのため、この時間をいかに効率化できるかが、人件費の最適化、ひいてはネットスーパー事業のコスト圧縮に直結するのです

では、ピッキング・パッキングを効率的に行うにはどのようにしたら良いのでしょうか。ピッキング・パッキングにはいくつか手法がありますが、各手法ごとに、採用するメリットや適切な条件があるため、自社の状況に合わせた最適な運用方法を採用していくことが重要となります。
ピッキングには、主に「カテゴリピッキング」と「シングルピッキング」の2つの方法があります。また、「カテゴリピッキング」を行う場合、パッキングは「種まきパッキング」または「摘み取りパッキング」の方法を取ります。
各手法ごとに、採用するメリットや適切な条件があるため、自社の状況に合わせた最適な運用方法を採用していくことが重要です。

例えば、retail HUBが支援する小売企業様のピッキング・パッキングの方法を見ると、ピッキングは「カテゴリピッキング」を採用する店舗が多い傾向があります。これは、バックヤードの作業スペースが広く、一度に10件以上の注文を扱う出荷店舗が多いことが要因です。そのような店舗ではカテゴリピッキングと種まきパッキングを組み合わせた方式が効率的であるため、カテゴリピッキングの採用比率が高くなっています。
(効率は1件あたりの注文単価、商品数など状況によっても異なります)

全体で見た際の採用比率に差はありますが、注文件数、作業スペース、作業社の習熟度などを考慮して、各企業や店舗毎に最適なピッキング・パッキング方法を選び、定期的に運営状況の見直しを行って、運用方法の改善を行っていくことが重要となります。(注文状況や作業習熟度の変化により、方法を変更する店舗も存在します。)
各手法の概要や詳細について、下記にて具体的なイメージ図とともに説明します。




ピッキング・パッキングの具体的な手法を説明しましたが、実際の現場オペレーションの効率をさらに高めるためには、スタッフの適切な人員配置が重要となります。
例えばピッキングは約30〜70分程度時間を要し、店舗作業時間の5〜6割程度を占める作業となります。ピッキング作業は、店に並ぶ数ある商品の中から、該当する商品の位置を素早く判断して商品を探し出し、商品の状態確認や代替対応も必要になる場面があるため、全体効率最適化のためには人員体制の戦略が極めて重要となります。

採用割合の高いカテゴリピッキングは、移動距離の効率化が測れるだけでなく、計画的な人員戦略を取ることでより効率化の効果を得られます。
以下の例では、生鮮や惣菜などの特殊な商品は各専門担当者がピッキングを行い、他カテゴリをネットスーパー担当や注文状況に応じて他業務担当にヘルプで入ってもらう運用を行っています。
カテゴリによってもピッキング難易度が異なるため、作業に慣れたネットスーパースタッフが比較的難易度の高いカテゴリをカバーし、その日のヘルプスタッフに難易度の低めのカテゴリ商品の担当を渡すことで、全体効率が向上するように運用をしています。

このように、カテゴリごとのピッキングを単なる形式ではなく、適切な人員を戦略的に配置して運用することが、ピッキングの最適化に極めて重要となります。
今回の記事では、ネットスーパーにおけるピッキング・パッキングの重要性と、その基本的な手法について一部事例を交えつつ解説しました。
retail HUBではバックヤードの設計や具体的な運用の落とし込みのご提案・支援をするだけでなく、ピッキングアプリやパッキングアプリといった、作業を素早く正確に行えるソリューションの提供も行っています。
次回以降、そのようなアプリを導入した企業様による改善事例を交えつつ、ピッキング・パッキングについて深堀りしていきます。


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