
今回はそれに続き、商品を店頭から集める作業である「ピッキング」に焦点を当てます。ピッキングのスピードと正確性の向上は人件費削減に直結し、ネットスーパーの黒字化へ向けた必要不可欠なピースです。今回はリウボウストア様の事例を取り上げ、ピッキング作業で陥りがちなミスや課題、紙リストからピッキングアプリ『retail HUB Picker』による改善効果などをご紹介します。
リウボウストア様ではアプリの導入以前、紙のリストを用いたカテゴリピッキング(*1)の方法でピッキング作業を行っていました。
*1 カテゴリピッキング:複数の注文をまとめてピッキングし、後で注文ごとに仕分ける方法。詳細な方法は過去記事<連載記事③>をご確認ください。
注文件数も増え、事業の拡大を目指していく中で、注文件数が多い日は別店舗からもヘルプスタッフを増員するなどし、ピッキング作業の効率化を図ってきましたが、以下の3つの課題が顕在化してきました。
課題①:紙のリストの文字情報だけに頼った商品探し
商品名やJANコードなどの文字情報だけでは、商品のイメージが直感的にできず、商品を見つけ出すことに時間を要していました。特に分かりづらい商品は、手元のスマートフォンで都度商品名を検索したり、バックヤードで調べたりすることも。瞬時に棚から商品を見つけ出すことに苦労し、大きなタイムロスが発生していました。
課題②:習熟度の差による、作業スピードのばらつき(作業の属人化)
日本語に不慣れな海外出身のスタッフや別店舗からの応援スタッフ(ヘルプ)は作業スピードが速い熟練スタッフと比べ2-3倍以上の差があり、作業水準の標準化に課題が起きていました。
課題③:誤ピックによる商品の取り直し
商品を間違えて誤ピックした商品をバックヤードに持ち帰り、それをパッキング作業中に気づき、商品を取り直しに行くことが発生し、時間のロスを生んでいました。1商品の取り直しに約3分かかるため、注文件数が増加するほど、誤ピックによるタイムロスが事業運営上のリスクとなっていました。
このように紙のリストによる目視作業は、「誰でも正確に素早くピッキングする」ことへのハードルを大きく上げていました。特にリウボウストア様の場合、担当スタッフ間でピッキングの作業レベル感が異なり、作業スピードや対応可能なカテゴリに差が生まれるという課題もありました。

その結果、本来MD(商品)整備などの業務時間を割くべき統括担当者までがピッキング作業に参加せざるを得ず、多くの時間が取られていました。
現状の店舗運営だけでなく、今後の店舗数拡大に伴うスタッフ教育やよりサービス改善を加速化させるためにも、各課題の解決は急務となっていたのです。
上記のような紙運用による課題を解決するため、ピッキングアプリ『retail HUB Picker』を導入し、アプリによる運用体制に切り替えました。
■ アプリによる作業効率の改善
アプリの導入により、全スタッフの作業効率(1分間に処理できる商品点数)は平均約1.5倍に向上しました。作業時間が特にかかりやすいスタッフにおいては、より大きな改善効果が出ています。

アプリ導入により、商品画像が表示されるため、直感的に商品を見つけられるようになりました。さらに、商品スキャンによる誤ピックの検知が可能になったことで、作業の正確性が担保されます。その結果、不慣れなスタッフでも熟練者に近いスピードと正確さでピッキングできるケースが増加しています。
■ 誤ピックの商品が0に
導入前は、ピックした商品全体のうち約2%の誤ピックが発生していましたが、アプリ導入後は誤ピックの発生件数が0となりました。下記のような誤ピックが起きやすい場面でも、商品ピック時に正誤判定が行われるため、事前に誤ピックを防止できています。

これにより、商品をピックし直す際にかかっていた時間や作業の煩雑性が無くなったことで、時間ロスの低減とパッキング作業への集中ができるようになりました。
■ 人員体制の変化(作業標準化がもたらす効果)
アプリの導入によって習熟度の影響を受けづらくなったことにより、不慣れな初心者でもピッキングを行うカテゴリに幅を持たせられるようになりました。
例えば、紙リスト運用時は、海外出身のスタッフの方は比較的ピッキング作業が行いやすい「冷凍食品」「パン」のカテゴリのみピッキング作業を行っていましたが、アプリ導入後は「グロサリー」など商品が多くあり難易度が高いカテゴリのピッキングもできるようになっています。
このように「誰でも一定レベルで作業できる体制(標準化)」が整ったことで、ピッキング作業に多くの時間を取られていたネットスーパーの統括担当者は、ピッキングに参加する時間を減らすことができるように。結果、MD整備や欠品対策など、サービス品質を高める本質的な業務に時間を当てることができるようになりました。
つまり、アプリによる作業標準化は、現場の効率化から一歩進んで、ネットスーパー事業全体の品質と収益性を向上させるための重要なステップにも繋がるのです。
■ ピッキングアプリを利用していただいた声
アプリ導入後に実際に作業して頂いたスタッフの方にアンケートを実施したところ、導入効果が現場レベルで強く実感されていることが分かりました。
✔️ 商品を探す手間が減ったか
アンケート回答者全員が「減った」と回答。さらに、そのうち7割近くが「非常に減った」と回答しました。
✔️ ピッキングミスが減ったか
こちらも全員が「減った」と回答。その半数以上が「非常に減った」と回答し、正確性の向上も高く評価されました。
また、アンケート内の自由回答では、「商品画像が見えることで探しやすくなった」「誤ピックや商品の取り忘れ防止ができるようになった」といった声も多く出ており、紙運用時に抱えていた課題感の解決に繋がる効果が現場のアンケートでも見受けられました。
retail HUB Pickerはアプリ上に表示される商品リストをもとに、店頭の商品バーコードをスキャンすることで記録していくアプリです。ハンディターミナルやandroid OSの端末(*2)にて利用できます。
(*2)弊社側にて動作確認を行った端末でのご利用を推奨させて頂いています
従来の紙リストが抱えていた、『目検の欠点』『属人化』や『誤ピック』といった課題を解決し、「誰でも、速く、正確な」ピッキングを実現するためのソリューションです。

実際の作業画面は下記のようになり、商品画像によって棚から商品を瞬時に探すことができるだけでなく、リストにない商品をスキャンした場合はエラー通知が出るため、誤ピックを防ぐことができます。

ピッキング作業効率化は、人件費としてかかる費用に直結するため、ネットスーパーの黒字化のためには重要な要素です。特に紙リストに頼る運用では、作業効率の標準化や誤ピックの防止といった課題が存在しています。
ピッキングアプリは、ピッキングレベルの効率化・標準化を実現し、本来目指すべきネットスーパーの運営体制の早期な整備に貢献することができ、ネットスーパー事業の黒字化を後押しします。
今回まで3回に渡りピッキング・パッキングについて取り上げてきました。次回以降は、ロイヤルユーザーの傾向など、実際に利用しているユーザーに着目した、売上向上に繋がるポイントなどの解説を行う予定です。お楽しみに。


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